犬猫のがんに「個別化」の治療を目指して ANCHORSが東京大学・東京農工大学と共同研究を開始


がん組織から作る「オルガノイド」で薬を探す共同研究
MiraiVets Partners株式会社のグループ会社である株式会社ANCHORSが、国立大学法人東京大学大学院農学生命科学研究科、国立大学法人東京農工大学との共同研究を始めました。テーマは、犬猫の腫瘍に対する個別化分子標的薬療法の開発です。
研究では、犬猫のがん組織から作製したオルガノイドを使い、症例ごとに適した分子標的薬を探索し、科学的に検証しています。有望な治療候補については、大学の倫理審査委員会の承認を得た臨床研究として、飼い主の同意のもとで有効性と安全性の検証を進めます。

人の医療で進む「個別化医療」を獣医療へ
人の医療では近年、遺伝子情報や腫瘍の特性をもとに治療を選ぶ「個別化医療」が進んでいます。一方、獣医療では、犬猫それぞれの腫瘍特性に応じた分子標的治療の確立はまだ発展途上です。科学的根拠に基づいて治療を選べるよう支える技術基盤づくりが求められています。
東京大学と東京農工大学は、獣医腫瘍学・薬理学の分野で研究実績を持っています。ANCHORSは、全国の動物病院ネットワークを通じた豊富な臨床症例と検体の収集体制を備えています。今回の共同研究は、それぞれの強みを持ち寄り、犬猫のがんに対する新しい個別化治療モデルの構築を目指すものです。
大学とANCHORSの役割分担
- 東京大学・東京農工大学:腫瘍検体やオルガノイドの解析、薬剤スクリーニング/新規分子標的薬の薬理学的解析および安全性解析/臨床試験の遂行
- 株式会社ANCHORS:犬猫の腫瘍検体および臨床情報の提供/症例登録/動物病院ネットワークとの連携/臨床試験の実施を検討

自宅で与えられる「経口の分子標的薬」に着目
研究責任者である東京大学大学院農学生命科学研究科の中川貴之教授は、犬猫の自然発生腫瘍を対象に、東京農工大学が持つ先進的な犬猫のがんオルガノイド技術と、東京大学が蓄積してきた獣医腫瘍学研究の知見をもとに選定した新規の分子標的薬パネルによるスクリーニングを組み合わせ、新しい個別化医療基盤を築くことを目指していると説明しています。大学と臨床現場の連携によって、研究成果の社会実装を目指したい考えです。
具体的には、飼い主が自宅で投与できる経口の分子標的薬といったカテゴリーの薬剤について、目の前の犬猫のがん症例にどの薬剤が有効かを体外でスクリーニング検査し、有効性が期待される薬剤を提案する新しい治療法の開発を目指しています。経口の分子標的薬とは、手術や放射線治療だけでは対処できない、全身に転移したがんなどに有効な全身療法の一つです。特異性が高く、注射薬などの殺細胞性抗がん剤と比べて、軽度な副作用で効果が期待できることの多い薬剤群とされています。
共同研究の担当者は、東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医外科学研究室/東京大学附属動物医療センターの特任講師・加藤大貴氏と、国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院 農学部共同獣医学科 獣医薬理学研究室の准教授・臼井達哉氏です。

国内外の学会で発表、臨床応用に向けた検証段階へ
この共同研究の成果は、すでに複数の学会で報告されています。European Society of Veterinary Oncology Congress(欧州獣医がん学会大会)、World Veterinary Association Congress(世界獣医師会大会)、Korean Veterinary Oncology Society Congress(韓国獣医がん学会大会)、日本獣医がん学会、日本患者由来がんモデル学会学術集会、日本獣医内科学アカデミー学術大会など、国内外の多数の学術集会で発表や招待講演が行われ、獣医腫瘍領域の先進的な個別化医療研究として議論が重ねられています。
「犬猫のがんを対象としたがんオルガノイド分子標的薬スクリーニング」は、基礎的な検証の積み重ねを経て、臨床応用に向けた検証段階に進んでいます。現在、東京大学と東京農工大学で、難治性がんの症例を対象にこのスクリーニング検査の臨床研究を実施中です。ANCHORS所属の動物病院では、臨床研究への症例登録を進めるとともに、希望する飼い主からの相談や紹介も受け付けています。なお、この研究は研究段階にあり、特定の治療効果や実用化の時期を保証するものではありません。
MiraiVets Partnersグループは、株式会社Japan Animal Care Holdings(JPAC)と株式会社ANCHORSを傘下に持つ動物病院グループで、全国15都道府県に50施設(49動物病院、1検査施設)を展開しています。ANCHORSは今後も大学との共同研究を基盤に、犬猫のがんを中心とした獣医腫瘍学分野の研究開発を進め、科学的エビデンスに基づく新たな診断・治療技術の創出と社会実装を通じて、動物たちと飼い主がより良く生きられる社会の実現と獣医療の発展に貢献していくとしています。


















